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ブログ記事

「おやすみなさい。また明日。」

 

 一日の終わりをあなたの声に包まれながら終える。

 優しい時間。あたたかな時間。

 まるで、あなたのぬくもりそのもので、私はいつも安心しきって眠くなる。

 

 考えたことはなかった。

 どうして、こんなにも居心地がいいのか。

 気持ちのいいものがそこにあるだけで、それでいいと思っていた。

 

 でも、彼はいつも怒った。

 突き放したように、私に冷たく接した。

 どうしてか、わからなかった。

 

「お前の傲慢さが憎い。そこにあるものを当たり前だと思っているお前を心底価値のない女だと思う」

 どうして?楽しければいいのに。そこにあるものを精一杯楽しんで何が悪いの?自分自身に素直に生きているだけなのに。

「お前は大事なメッセージも受け取れない。本物も偽者もわからない。人間一人の本当の気持ちすら、汲んでやることができない。浮かされているだけで、人に対する覚悟も何もない。食い荒らしては、感謝の気持ちひとつもなく、次に手をつける。餌を与えられて食っているだけの家畜以下の女だ」

 そう言いながらも彼は、そこに、それに、どんな意味があるのか、私が少しでもわかるように教えてくれる。

 わからなければ、わかるまでお仕置きされた。

 

 彼は私のことを「砂のような女」だと言った。

 私は意味がわからずに聞き返すと、「すぐ忘れる。すぐ思い上がる。すぐ感謝しなくなる。すぐ人の思いがお前の心の中から消える。すべてその場限り。水を注いだ砂のように、次の瞬間には何もなくなっている」と彼は答えた。

 

 彼は「土を作る」と言った。

 「どうしたら土ができるの?」と聞いた。

 彼は「本当のお前という人間を再生させる」と言った。

 

「本当の自分の姿…?」

「百二十パーセント、お前が自分自身でいられる状態だ。お前は心底そういう表現を人にしたことはなく、ずっと抑えられてきた。ずっと、何かを出して、その片方で何かを押し殺してきた。その鎖を切って、お前を解放する」

 

 よくわからなかった。

 どんな状態なのか、どんな気持ちなのか。

 でも、不思議と疑うことはなかった。

 そうなんだ。そうされるんだ。

 心ではしっかりと感じていた。

 

 私には嬉しいことがたくさんある。大事にしたいことがたくさんある。

 それらに接するたびに、彼の言っていることがわからなくなる時や、忘れる時がある。

「生身の人間を相手にしている。生身の反応に接している。生身の心に接している。それを理解できないお前には奴隷としての価値すら生まれない」

 そう言いながらも、きちんと教えてくれる。

「浮かされるな。自分を見失うな。当たり前だと思うな。感謝もできない人間に、世界は必要ない。見限られるだけだ」

 

 世界に見限られる…?

 

「大事なものが消えてしまう前に、魂のすべてを使って、それを抱き締めろ。それができる女になれ…」

 私は、すべては理解できなかったけれど、「はい。わかりました」と彼に返事した。

 

 彼と話をしていると、私が何事もなく通り過ぎた過去に次々と命を吹き込んでいった。

 あの時のあの人の言葉、仕草。すべて意味のあったことなんだと教えてくれる。

 生きてきたことが、どんどん鮮明になって、ぼやけた過去ですら、忘れていた過去ですら思い出す。

 今まで意識しなかった人の仕草や言葉の意味まで考えるようになってきている。

 

「土を作る」

 

 彼の色々な言葉が、日常でも浮かぶようになってきた。

 ある日、彼に過去のことを話している時、ある人から言われたことを、彼に言った。昔「ご主人様」だった人が、私が他人に抱かれているとき、言われた命令に従わなかったことで怒ったこと、「お前は奴隷なんだぞ。奴隷だと誓ったんだぞ。その意味がまったくわかっていない!」そう怒られたこと。悔しそうに泣いて俺を傷つけたと言ったこと、「ご主人様」が仕事すらも放棄したこと。

「魂には、魂を。当時のお前にはそれが一切わかっていなかった。それだけお前に、命と人生をかけていた」

 彼はそう言った。一度も会ったことのない「ご主人様」の気持ちを、少ししか聞いていないのに「ご主人様」の本心を、私よりもよくわかっていた。

 

 そして私はふっと「ご主人様」の言葉を思い出して、彼へと言ってしまった。

「幸せになれなんて、どうして言ったんだろ。私があなたの奴隷になれば楽になれるのかな?」

 私が言い終わると瞬時に彼の顔は豹変し、怒りに満ちた顔で私の頬をぶった。

 口の中に血の味がしてくる。

 私は何が起こったのかわからなくて、恐る恐る彼を見ると、泣いていた。

 悔しそうな顔で、歯を食いしばりながら、見たこともないほど悲しい顔で、涙を流していた。

 その顔を見ただけで、心が痛かった。とても痛かった。

「お前は…自分自身のことすら、相手に丸無げにするのか。そうやって、相手のことを、相手の気持ちを、なにひとつ受け止めずに侮辱し続けるのか」

 一言一言、搾り出すように彼は言った。一言搾り出すごとに、彼は涙を流した。

「こんなことで…お前をぶたせるな。こんなことで…この俺に…お前を…ぶたせるな…」

 最後まで彼は言葉を力強く、悔しそうに、涙混じりに振り絞って言った。

 どんなにぶたれても、こんなにも心が痛むことはないと、思った。

 私は泣きながら彼に「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返した。

 心の底から「ごめんなさい」と謝った。

 

「ご主人様にもあなたにも謝らないと」

 そう言うと彼は「わかればもういい。俺のほうはもういい」と言った。

 あれほど泣いたのに、もう彼のぬくもりに包まれている。

 優しいキスにも包まれながら、私は心地のいいまどろみへと落ちていく。

「眠いです…」

「安心しておやすみ…」

 彼の優しい声が私の中に響き渡って染みていく。

「はい。おやすみなさい。また明日…」

 私はどこまでもふかふかの世界に落ちていく。




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